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気づけば、私はよく天井を見上げています。
カフェでも、美術館でも、古いお寺でも。
何気なく座ったその瞬間、視線は自然と上へ向かい、空間を支える“もうひとつの風景”を探してしまいます。

天井には、その建築の「語り口」があるように感じます。
高さや素材、照明の位置、納まりの精度――。
どれも、設計者が空間の呼吸をどう整えようとしたかを物語っています。
ときには、職人さんの手による繊細な仕上げに、思わず息をのむこともあります。

美術館の静けさの中で、ふと見上げた天井の光が、展示物よりも印象に残ることがあります。
直接照らさず、空間全体をやわらかく包み込む光。
その背後には、設計者と照明デザイナーの緻密な対話があったのだろうと想像してしまいます。

一方、古いお寺の天井を見上げると、木材の反りや年輪、塗装のかすれに、時間の流れを感じます。
そこには、図面では表せない、時が育てた穏やかな美しさが宿っています。

天井は、私たちの頭上に静かに在りながら、空間の印象を決める大切な要素です。
そこには、設計者の思想と職人の技が、静かに息づいています。
日常のなかでふと見上げたその瞬間、そこに込められた意図や手の跡を感じ取ることができたなら、
建築というものが、少しだけ身近に感じられるかもしれません。
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