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こんにちは。
かつて住まいを設計するうえで「南の光をどう取り入れるか」は大きなテーマでした。
四季のある日本では、冬の低い太陽を迎え入れ、夏の強い日差しは深い軒で遮る。
そんな「太陽と仲良く暮らす工夫」が、パッシブデザインの基本とされてきました。
南に大きな窓を開け、家の中に明るさとぬくもりを招く。
その光景には、確かに心を豊かにする魅力がありました。
けれども、気候が変わりつつある今、かつての工夫だけでは追いつかない現実があります。
夏の日射は年々強さを増し、室内はあっという間に熱をため込みます。
軒や庇での調整が難しくなり、南からの光がもたらすのは「心地よさ」よりも「暑さ」と感じられる時間のほうが増えてきました。
外付けブラインドやグリーンカーテンで和らげることもできますが、それでも日射のエネルギーは大きく、私たちの暮らしに負担をかけてしまいます。
その一方で、近年あらためて注目されているのが「北側からの光」です。
北の空から届く光は、一日を通して安定していて、強い陰影をつくることがありません。
ふわりと室内に広がり、壁や床を柔らかく照らすその明るさは、まるで優しい布に包まれるようです。
読書をしても眩しさを感じにくく、食卓を囲んでも顔がきれいに見える。
静かで、穏やかで、心を落ち着かせてくれる光なのです。
北側採光の魅力は、決して華やかではありません。
けれども、その穏やかさこそが、日々の暮らしに寄り添う力を持っています。
強い日差しの季節にあっても、安定した照度で部屋を明るくしてくれること。
夏に窓を開けても、南ほどの熱気を感じにくいこと。
そんな小さな安心感が、心地よい暮らしの背景をつくってくれるのです。
これからの住まいは、「南の光を大きく迎える」から「北の光を優しく取り入れる」へと、少しずつ視点を変えていく必要があるのかもしれません。
光を浴びることの喜びはそのままに、より柔らかく、より穏やかに。
気候変動という大きな変化の中で、私たちの暮らしに寄り添ってくれるのは、実は北からの静かな光なのだと気づかされます。
窓辺に差し込むその柔らかな明るさは、日常に静かな安心を与え、心をゆるやかに解きほぐします。
光の質を選ぶことは、暮らしの質を選ぶこと。
これからの住まいづくりには、北側採光の持つ静かな美しさも、大切にしたいと思うのです。
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