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家づくりの仕事をしていると、
「完成、おめでとうございます」とお引き渡しの日に言いながら、
心の中では少し違うことを思っています。
この家は、ここからが本当のスタートだな、と。
建物としては完成していても、
住まいとしては、まだ何も始まっていない状態。
だから私は、完成した瞬間が、いちばん未完成だと思っています。

住まいは、人が暮らしてはじめて意味を持ちます。
朝の光の入り方に気づいたり、
お気に入りの椅子の置き場所が決まったり、
家族の生活リズムが、少しずつ空間に染み込んでいく。
その積み重ねで、
図面には描けなかった「その家らしさ」が生まれていきます。

だから設計するとき、
私たちは“完成形”をつくりきらないようにしています。
余白を残すこと。
変化を受け入れられること。
時間が経つほど、しっくりくること。
素材選びひとつ取っても、
新品の美しさより、
数年後、十数年後の表情を想像します。

住まいは、消費するものではなく、
一緒に歳を重ねていくものだと思うからです。
少し傷がついてもいい。
手を入れながら、手放せなくなっていく。
そうやって「自分たちの家」になっていく過程こそが、
いちばん豊かな時間なのかもしれません。

完成の日、
私たちは一歩引いて、その家をお渡しします。
未完成なまま、
あとは、住まい手の時間に委ねるために。
それが、設計士としていちばん美しい瞬間だと、
私は思っています。
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