works
リノベーション
名古屋市熱田区。
歴史の趣を残しながら、現代的な暮らしが息づくこの街の高層マンションに、静けさをまとう一室が完成しました。
クライアントは、仕事に追われる日々の中で、心からくつろげる時間を求めていました。
「自宅で過ごす時間を、何よりも心地よいものにしたい」
そんな願いから、このリノベーションは始まりました。
既存の間仕切りはすべて取り払い、光と風がのびやかに通り抜ける空間へ。
壁や扉に囲まれていた部屋の連なりをほどき、暮らしのリズムが自然と整うように設計しています。
ひとつながりの空間の中で、家具や照明の配置、素材の質感によって緩やかにシーンを分ける。
広がりと落ち着き、その両方を感じられる住まいです。
床には質感豊かなタイルを採用し、足元に程よい冷たさと重厚感をもたらしています。
天井には天然木を配し、視線を上に向けることで空間に温かみと落ち着きを添えました。
壁は柔らかな曲線を描くR仕上げの塗り壁とし、光の角度によって陰影を変え、静かに表情を変える素材感を大切にしています。
家具や調度もすべて、この住まいのために選定・製作しました。
ソファやテーブル、照明に至るまで、素材感と存在感のバランスを丁寧に吟味。
キッチンやカップボードはオーダーで設計し、使い勝手と美しさを両立させています。
取手の形や収納の奥行きなど、細部にまで心を配ることで、空間全体が穏やかにまとまりました。
窓の外には、白鳥庭園の緑が広がります。
季節の移ろいを間近に感じながら、都市の喧騒を忘れさせてくれるような眺めです。
夜には、庭園の先に街の灯りが柔らかく瞬き、室内の光を抑えめにすると、静かな時間がゆっくりと流れはじめます。
照明は天井からの直接光を最小限にし、間接照明で壁や天井を優しく照らす。
光が空間に溶け込み、昼と夜とで異なる表情を見せてくれます。
この住まいは、華やかさよりも、静けさの中にある豊かさを大切にしています。
余白を残した空間には、深呼吸するような安らぎがあり、何もしない時間さえも贅沢に感じられる。
デザインの目的は装飾ではなく、心地よさの結果としての美しさ。
日常を慈しみながら、静かに自分を取り戻せる場所。
この部屋に満ちるのは、音もなく流れる穏やかな時間。
窓辺の景色とともに、心をゆるめる暮らしが、今日もここからはじまっています。


