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imaizumi blog

Mercedes-Benz Museum

2026.01.21

Mercedes-Benz Museum―「動線」が思想になる建築

 

ドイツ・シュトゥットガルトにある Mercedes-Benz Museum にて。


この建築を体験して最も強く印象に残ったのは、意匠でもスケールでもなく、「動線そのものが建築思想になっている」という点でした。

多くの建築は、「どんな形をつくるか」「どんな素材を使うか」から語られがちですが、この建築は明らかに逆です。

まず「どう人を導くか」があり、その結果として、形と構造が必然的に立ち上がっている。

重力と時間を感じさせる空間構成

 

館内に一歩足を踏み入れると、直線的な移動はほとんど存在しません。

緩やかに、しかし確実に人を下へ導くスロープ。


視線は常に少し先を向き、自分が「どこにいるのか」を感覚で理解させられる。

これは単なるバリアフリー設計ではなく、


時間の流れを空間で体験させる装置だと感じました。

クルマの歴史を「説明」するのではなく、身体感覚として「辿らせる」

この思想は、住宅設計においても極めて示唆的であると思います。

構造が意匠を支配していない

 

印象的なのは、この巨大な空間が構造を誇示していないことです。

構造は確かに強く複雑で高度。しかし、それを前面に押し出さない。

コンクリートは語りすぎず、鉄は主張しすぎず、ガラスは風景を奪わない。

「強い構造ほど、静かであるべきだ」

そんなメッセージを、建築そのものから受け取りました。

これは、住宅でも同じです。本当に上質な家ほど、構造を“感じさせない安心感”として内包しています。

Mercedes-Benz Museumが教えてくれるのは、ラグジュアリーとは


装飾や価格ではなく、体験の質であるということ。

・歩く速度
・視線の高さ
・音の反響
・光の入り方

それらが無意識のうちに整えられているからこそ、人は「心地よい」と感じるのではないでしょうか。

これから家を考える方にこそ、この建築を「クルマの博物館」としてではなく、空間体験の教科書として見てもらえたらと思います。

 

 

住宅に置き換えるなら、こう言えるかもしれません。

  • 間取りより先に、動線を考える

  • デザインより先に、時間の流れを考える

  • 設備より先に、身体感覚を想像する

Mercedes-Benz Museumは、「良い建築とは何か」を


静かに、しかし圧倒的な説得力で示してくれているように感じます。

家は、住むための器ではなく、人生の時間を包む構造体。

そんな原点を、この建築から改めて教えられた貴重な旅でした。