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imaizumi blog

構造がつくる、美の秩序

2026.02.03

構造がつくる、美の秩序

―― こざかい葵風館 建築訪問記

愛知県豊川市にある「こざかい葵風館」を訪れて、まず身体で感じたのは、“異常なほど安定した水平感”でした。

建築において「水平」は、最も誤魔化しがきかない要素だと思うのですが、
少しでも構造が弱ければ、少しでも納まりが甘ければ、このレベルの水平は成立しません。

つまりここには、最初から強い構造的裏付けがある。

この建築は、そう語りかけてきます。

 

 

設計を手がけたのは、伊藤恭行/Canさんです。

この建築を見て強く感じたのは、
「デザインを先に考えていない建築」だということです。

  1. まず、構造を決める
  2. 次に、空間を整理する
  3. 最後に、美が現れる

このプロセスが、最後まで崩れていない。

だからこそ、外装も、開口も、庇も、
すべてに“無理がない”。

 

さらに、この建築の最大の魅力は、やはり水平ラインの完成度にあります。

・深く張り出した庇
・連続する外皮パネル
・重心を下げたレイヤー構成

これらはすべて、「構造が強いからこそ可能な表現」ではないでしょうか。

構造に余力がなければ、ここまで薄く、軽やかに、水平を引くことはできないと思います。

見た目は静かですが、中身は極めて“強い建築”。

このギャップこそが、上質さの正体です。

 

 

 

外装に使われているパンチングメタルも、
単なる装飾ではありません。

日射制御、視線の調整、表情の変化、メンテナンス性

すべてが合理的に設計されている。

「美しく見せるため」ではだけではなく「長く使うため」に設計されている外皮です。

これは、公共建築でありながら、極めて住宅的な発想でもあると思っています。

 

内部に入ると、中庭と大開口が空間にリズムを与えています。

閉じすぎない、開きすぎない。

この絶妙なバランス感覚も、構造計画とセットで成立しているように感じました。

耐震性・剛性を確保した上で初めてここまで開ける。

「安心感のある開放性」これは、理想的な住宅にも直結する考え方です。

 

この建築を見ながら、終始感じていたのは、私たちkotoriの思想との親和性でした。

SE構法が目指すのは、

・大スパン
・高耐震
・長期性能
・設計自由度

つまり、
構造を起点に、価値をつくる建築です。

こざかい葵風館は、まさにその公共建築版の完成形と言えるのではないか、そう感じずにはいられませんでした。

構造が強いから、空間が自由になる。
空間が整うから、美が長持ちする。

すべてが論理的に繋がっている。

 

 

 

この建築は公共施設です。
しかし、本質はむしろ「超上質住宅」に近い。

・派手さはない
・流行を追っていない
・しかし10年後に差が出る

こういう建築こそ、本当の意味で“資産になる建築”だと思います。

富裕層住宅に必要なのは、豪華さではなく、
この「構造と思想の密度」だと思います。

 

こざかい葵風館を通して改めて確信したことがあります。

建築とは、
見せるためのものではない。

暮らしを支え、時間を支え、資産を支える構造体である。

伊藤恭行氏/Canさんの建築には、その覚悟が、静かに込められていました。

私たちkotoriもまた、この思想を住宅に落とし込み続けていきたい。

構造から考え、空間を磨き、美を長く残す。

それこそが、本当に価値ある住まいづくりだと、私は考えています。