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出社前の朝、少し時間に余裕があったので岡崎市の西光寺を訪ねました。
朝の光に包まれた境内は、静かで清々しい空気が漂い、日常の喧騒からすっと切り離されたような感覚を覚えます。
偶然にも御住職にお目にかかることができ、建築の背景や設計趣旨について直接伺う貴重な時間をいただきました。

この西光寺の外装は全てコールテン鋼で仕上げられています。
一見すると斬新で奇抜に思えるかもしれませんが、不思議なことに境内の自然な風景の中で違和感なく溶け込んでいました。
鉄の錆びた色合いが、周囲の木々や苔庭の柔らかな緑に静かに呼応し、むしろ落ち着いた佇まいを生んでいます。
建築が自然環境と対立せず、むしろその一部として受け入れられていることに驚きました。

入口のドアは鏡になっており、訪れる人はまずそこに映る己の姿と向き合うことになります。
ドアを開けると正面には、静かにこちらを見つめる阿弥陀如来像。

何気ない動作でそこに立ち、自然と手を合わせ頭を垂れる。
まるで建物自体が参拝者を導く『装置』として設計されているかのようでした。
御住職の話を聞きながら、建築が単なる物理的な空間ではなく、訪れる人の心を整える時間と体験をつくる営みであることを改めて感じました。
鋼の冷たさや硬さを感じさせないのは、設計に込められた人間への優しさと配慮があってこそでしょう。
外観の大胆さと内面の静謐さ、そのコントラストが、心に深い余韻を残します。
朝のわずかな時間の散策でしたが、建築の力を静かに体感したひとときでした。
日常の中でこうした瞬間に出会えることこそ、設計者としての喜びであり、建築の魅力だと改めて思います。
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