Loading...

imaizumi blog

造形物の思想

2025.11.19

— みとゴルフ倶楽部にて**

豊川の丘陵地に広がるみとゴルフ倶楽部。


ここを訪れる度に感じるのは、


“豊かな時間とは、視界に映るものの密度で決まる” ということです。

今回目を奪われたのは、コース脇に佇む小さなモニュメント。


レンガの基壇に、幾何学的なコンクリートの塊が静かに据えられています。


その存在は決して主張しないのに、


風景の重心をわずかにずらし、場の空気を整える力を持っている。

建築家としてこの造形に惹かれた理由は、


“用途を想定しない造形の自由” と


“ランドスケープに生まれるわずかな緊張” にあります。

モニュメントは、座るためのベンチでもあり、


風景を読むための視点場でもあり、


ただそこに佇む彫刻でもある。


明確に定義されない曖昧さが、


この場所に深い余韻を与えています。

素材は素朴なコンクリートとレンガ。


しかしその組み合わせは、


工業製品の冷たさではなく、クラフトの温度を纏っている。


触れればわかる、職人の手が残した微細な癖。


この「完全ではない美」は、


多くのラグジュアリーブランドが追い求める“本質の豊かさ”そのものです。

ゴルフ場という非日常の空間において、


このモニュメントはひとつの “静かな贅沢” を体現しているとも言えます。

派手さではなく、


気づいた人だけが受け取る美学。


過剰さではなく、


削ぎ落とされたバランス。

建築とは、本来こうした“風景の余白を整える仕事”なのだと、


改めて感じさせられました。

私自身、建築設計と工務店の仕事を通して、


暮らしの背景となる 美と構造の調和 をつくり続けていきたい。


そんな想いを静かに重ねながら、


この小さなモニュメントの前で立ち止まりました。