imaizumi blog
北海道・美瑛「bi.ble」を訪ねて
――内藤廣が示した、“風景に従う建築”という最高の贅沢
北海道・美瑛。
丘陵が連なり、空と大地の境界が溶け合うこの場所に佇む bi.ble は、建築そのものが語りすぎない、極めて成熟した空間です。
設計を手がけたのは 内藤廣建築設計事務所。
日本建築において「風景・社会・構造」を静かに、しかし徹底して読み解いてきた建築家が、この地で導き出した一つの答えが、この建築だと感じました。
風景に逆らわないアプローチ

並木に導かれるアプローチは、象徴的な演出を排しながらも、訪れる者の感覚を自然と整えていきます。
これは装飾ではなく、「身体感覚の設計」
歩く速度、視線の高さ、空の入り方。
すべてが制御されすぎず、しかし放置もされていない。その絶妙なバランスに、内藤建築らしい“抑制の美学”がはっきりと現れています。
低く、長く、美瑛に従う建築

建物は決してランドマークになろうとしません。
低く、水平に、風景の稜線に寄り添うプロポーション。
これはデザインの結果ではなく、土地を読み切った末の必然です。
建築が主役になることを拒み、風景の一部として成立する。その姿勢こそ、時間に耐える建築の条件だと、改めて感じさせられました。

内部空間に宿る「構造と素材の誠実さ」
内部に入ると、木質天井と柔らかな自然光が空間を支配します。
素材は決して饒舌ではありませんが、断面・スケール・納まりの一つひとつが極めて正確です。
ここにあるのは「高級感」ではなく、信頼感。
構造と素材が嘘をつかない空間は、長い時間を経てこそ真価を発揮します。
内藤廣建築の本質
内藤廣の建築は、自己主張のための造形ではありません。
社会、土地、使われ方——それらを徹底的に観察し、建築を“翻訳装置”として立ち上げる。
bi.ble もまた、美瑛という土地が持つスケール感や静けさを、建築として翻訳した存在です。
だからこそ、この空間には流行がなく、劣化もしない。

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